着用者と共につくるスポーツバインダー、LGBTQ+ユース当事者向けフットサル試着会を実施
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皆さんこんにちは!OPTでインターンをしている髙田楓加(たかだふうか)です。現在OPTでは、スポーツパフォーマンスが向上するだけでなく、ノンバイナリーやトランスジェンダー男性、FtXの方々が抱えるスポーツブラや*バインダー(ナベシャツ)に関する悩みを解決するため、スポーツバインダーの開発を進めています。
LGBTQ+ユース当事者向けのバインダー試着会やシスジェンダー女性向け試着会に引き続き、2025年3月25日に第二回LGBTQ+ユース当事者向けフットサル試着会を「*OPT PLAYGROUND」にて実施しました。
当日は、髙田を含むユース当事者3名とOPT社員、ファウンダーのふたりが集まり、「理想のスポーツバインダー」をテーマに座談会・OPTのサンプル試着会を実施しました。イベント前半の座談会では、バインダーをつけて運動をした経験と悩みの共有、それぞれが今後使用してみたい理想のバインダーや理想のバインダーを着用してやってみたいことについて話し合いました。また、イベント後半の試着会では、OPTが開発中のスポーツバインダーのサンプルをご着用いただきながら一緒にフットサルをしました。
*バインダーとは胸をつぶすための下着です。一般的には「ナベシャツ」と呼ばれておりますが、OPTでは「バインダー(Binder)」という海外で使用されている言葉を使っております。 「スポーツバインダー」は商標登録出願中です。
*OPTでは、女性とクィアが本気でスポーツを楽しめる場所として、ユーザーコミュニティ『OPT PLAYGROUND』というフットサル・フィットネスのイベントを定期開催しています。
①バインダー(ナベシャツ)に関する課題
- まず前半の座談会では、参加者の方からナベシャツに関する経験と悩みをご共有いただきました。ディスカッションに上がった参加者の皆さんの声をご紹介させていただきます。
- 自分自身の胸の目立ちに対して周りからの視線が気になる
- 走っている時やジャンプした時に胸が揺れることで胸が痛くなる
- 一方で、ある程度胸を圧迫してくれた方が胸が潰れている感覚があり安心感を感じる
- 下着のラインが透けたり、乳首が下着の上から透けて見えてしまう
- 胸を締め付けるための「さらし」の部分に付属している金具(フック)に脇の下が擦れて気になる事から腕を大きく振れない
- 谷間ができてしまうのが嫌だ
- 胸をきつく締め付けすぎると苦しくなり、呼吸ができなくなるため苦しい
バインダー(ナベシャツ)に関して沢山の悩みを抱えており、着用時の締め付けや金具などによる不快感などがスポーツ時の動きを制限しており悪影響を与えている事がわかりました。
②理想のバインダーについて
次に前半の座談会では、バインダーに関する課題に続き「理想のバインダー」について話し合いました。ディスカッションに上がった参加者の皆さんの声をご紹介させていただきます。
(1)理想のバインダーに必要な機能
- 胸が揺れず、胸の揺れによる痛みがなくなる
- 上・下・横から胸が漏れない
- 通気性が良い
- さらし部分を留めるためのフックやチャックが透けて見えない
- 胸のつぶれ具合が左右対称である
- 動いている時にずれない・滑らない素材である
- 脇の下の擦れがない・痛くならないような縫い目
- 乳首が透けない
- 鎖骨あたりが首元までつまっている
- 胸が目立たない
- 着ているだけで気分があがるデザイン
理想のバインダーに必要な機能について伺ったところ、現状抱えている課題を解決できるバインダーを必要としていることがわかり、これらの機能を備えたスポーツバインダーを届けたいとより一層強く思いました。
(2)理想の下着があったらしたいこと
- これがあるから今日は大丈夫という心持ちになりたい
- やりたいことを好きな人と一緒にできる
- 下着一枚で表にでたい、ジムに行きたい
- 普段ナベシャツの上から夏でも分厚い洋服を着ないといけないことから、スポーツバインダーの上に薄いTシャツを着るだけで過ごせるようになりたい
- 部屋に家族や友達がいてもラフな格好でいられるようになりたい
- 胸を気にしない男性のような状態になりたい
- 好きな格好や服を着てみたい
- 身体にくっつくような洋服を着れていなかったので着てみたい
理想の下着があったらしたいことを伺ったところ、ナベシャツによって当事者の人が好きな服を着ることができてない、また常に周りからの胸への目線を気にしてることから胸の膨らみがわからないような工夫をしている実態がわかりました。
(3)理想のデザイン
- 肌の露出が少ないデザインがいい
- 肩紐が細いとフェミニンっぽいので太い方がいい
- 黒・白・灰色・紫など透けにくい色が好ましい
- 上から服を着た時に下着のラインがでない方がいい
- 胸下のゴムに文字が入っているとかっこいい
理想のデザインについて伺ったところ、いかに下着のラインが透けず、かっこいいデザインを追求できるかが大切だとわかりました。
③スポーツバインダーを着用してフットサルをした結果
イベントの後半では、LGBTQ+当事者がバインダーに関して抱える課題を、開発中のスポーツバインダーで解決できるのかを検証するために、参加者にスポーツバインダーを着用していただき、「OPT PLAYGROUND」でフットサルをしてもらいました。これにより実際にスポーツバインダーの着用者が感じた変化をまとめました。
(1)スポーツバインダーの良かった点
- 今着用しているスポーツブラは谷間が見えてしまってイヤダ。しかし、スポーツバインダーは谷間が一切見えなく、今着ている下着よりも胸が平らに見える
- ナベシャツを着た時は脱ぎたくなるけど、スポーツバインダーは開放感があるので呼吸が圧倒的にしやすい
- ナベシャツは金具が体にあたって痛いけど、スポーツバインダーは金具がないので手の上げ下げや腕を振る動作をしやすい
- ナベシャツの時は胸の揺れにより痛みが生じるけれども、スポーツバインダーは胸が揺れないことから痛みは全くなかった
ナベシャツの課題であがっていた「胸の目立ち」「呼吸のしやすさ」「動きやすさ」「胸の揺れ」が今のサンプルでは解決できていることがわかりました。
(2)スポーツバインダーの改善が必要な点
- 胸の揺れは気にならないけど、胸の下がはみ出ているのが気になった
- 最初に着る時はさらさらで着心地が良いが、汗をかくと蒸れてしまった。汗を吸っている感じがしなかった。
胸の下のはみ出しや汗を吸収する機能が足りていないことがわかり、今後の改善へ繋げていき、より良いスポーツバインダーの開発を進めていきたいと思います。
④まとめ
今回のヒアリング・試着会を通じて、ナベシャツによりスポーツ時の動作へ制限が生じていることや好きな服を着る事ができないなど、多様な課題を抱えている事がわかりました。また、同時に現在のサンプルであるスポーツバインダーにて解決できた課題が明確になったと共に、スポーツバインダーを通して当事者の人が好きな格好で、好きなことを思い切りできるよう状態をつくりたいと思いました。
そして、更に快適で理想のスポーツバインダーを開発するためには、「胸の下のはみだし」「吸汗性のある素材」へと改善する必要があるとわかりました。
今後もトランス男性やFtX、ノンバイナリーの方々だけでなく、シスジェンダー女性にとっても「快適で自分らしくいられ、パフォーマンスを向上させるスポーツウェア」を目指して開発を進めていきます。今回の試着会・座談会のようなイベントは今後も定期的に開催予定です。ぜひ、完成までのプロセスをユーザーの皆さんと一緒に作り上げていければと思います。