着用者と共につくるスポーツバインダー、シスジェンダー女性向けフットサル試着会を実施

皆さんこんにちは!OPTでインターンをしている髙田楓加(たかだふうか)です。現在OPTでは、スポーツパフォーマンスが向上するだけでなく、ノンバイナリーやトランスジェンダー男性、FtXの方々が抱えるスポーツブラやバインダー(ナベシャツ)に関する悩みを解決するため、スポーツバインダーの開発を進めています。



2024年8月20日にはLGBTQ+ユース向けの試着会を実施し、続く2025年2月25日の「OPT PLAYGROUND」では、普段から運動をしているシスジェンダー女性を対象に、スポーツブラの悩みを聞くヒアリング会と、開発中のスポーツバインダーの試着会を開催しました。

当日は髙田とOPT社員、ファウンダーの二人に加え普段からスポーツをしているシスジェンダー女性2名に参加していただきました。

本記事では、そのリアルな声をもとに、シスジェンダー女性の視点から「理想のスポーツウェア」と「スポーツバインダーの可能性」について考えてみたいと思います。

*バインダーとは胸をつぶすための下着です。一般的には「ナベシャツ」と呼ばれておりますが、OPTでは「バインダー(Binder)」という海外で使用されている言葉を使っております。 「スポーツバインダー」は商標登録出願中です。
*OPTでは、女性とクィアが本気でスポーツを楽しめる場所として、ユーザーコミュニティ『OPT PLAYGROUND』というフットサル・フィットネスのイベントを定期開催しています。


1. スポーツ時に胸に関して気になること

イベント前半のヒアリング会では、参加者の方々がスポーツ時に感じるスポーツブラに関する悩みを伺いました。スポーツブラの課題として、参加者から以下のような声が挙がりました。

(1) 胸の揺れとフィット感

  • ユニフォームを自分で選べない時に抵抗を感じる
  • 動作が大きくなるほどズレやフィットしていない感覚がある
  • 胸が揺れることが気になる

「胸の揺れ」に関してはLGBTQ+ユース当事者向けの座談会にて当事者から挙げられた悩みと共通し、シスジェンダー女性も同じ悩みを抱えているとわかりました。そのため、プレー中に大きな動作や胸の揺れを気にせず、集中できるウェアが求められていることが明らかになりました。

(2) 締め付けや息苦しさ

  • 強い締め付けを感じると呼吸がしにくくなる
  • 生理中は胸が張り、スポーツブラの着圧が気になる

「胸の揺れ」と同様に「締め付け」や「呼吸のしにくさ」に関しても、シスジェンダー女性とLGBTQ+当事者は同じ課題を抱えているとわかりました。また、生理中に胸トラップをすると胸が痛くなってしまうという新しい課題を発見しました。

(3) デザインと心理的な影響

  • 形が綺麗に見えるデザインがあると嬉しい
  • ウェアによってモチベーションが変わる(ネイルや新しい服と同じ感覚)

機能面だけでなく、「見た目が良いこと」もスポーツウェアに求められる要素だとわかりました。

(4) 100%の快適さ

この「100%の快適さ」の定義に関して私の個人的な考えでは、運動時に下着を着用しても不快感や制約を一切感じず、自分のパフォーマンスや集中力を最大限発揮できる状態と考えていました。
さらに、参加者の皆さんにも「100%の状態とは何か」をお聞きしたところ以下の声をいただきました。

  • 胸の存在を忘れられる状態が理想
  • 動きやすくなる、パフォーマンスが向上するウェアが100%
  • デザインや見た目の影響もある(姿勢が良く見えるなど)

スポーツパフォーマンスを向上させるだけでなく、着ていることを忘れられるような状態になるスポーツバインダーが求められているとわかりました。

(5) さらに120%の快適さを求めるなら

  • 姿勢がよく見える、肩や筋肉が綺麗に見えるなど褒められると嬉しい
  • 着心地や見た目の可愛さなどデザイン性が重要

さらに120%の快適さを求めるには、下着の機能面だけでなく、デザインを通して「自分をどう見せるか」も大事だとわかりました。


2. スポーツバインダーを着用してフットサルをしてみた

イベントの後半では、シスジェンダー女性がスポーツブラに関して抱える課題を、開発中のスポーツバインダーで解決できるのかを検証するために、参加者にスポーツバインダーを着用していただき「OPT PLAYGROUND」でフットサルをしてもらいました。これにより実際にスポーツバインダーの着用者が感じた変化をまとめました。

(1) 胸の揺れを抑える

  • 揺れは抑えられ、運動しやすかったが、胸下がはみだしてしまっていることから、アンダーバストの安定感が足りないと感じた。
  • 普段の下着ではある程度のホールド感(生地による)がある分、激しい動作をした時のズレが気になったり、手で直したりすることが時折ある。一方、スポーツバインダーはホールド感というより胸全体が覆われている感覚に近くズレも感じなかった点において、普段使用する下着より快適だった。

スポーツバインダーは「胸の揺れを抑える」という点で効果を発揮していることが確認できました。一方で、胸下の肉がはみ出てしまう問題があり、フィット感やホールド感をより高めるための改良が必要だとわかりました。

(2) 何も着用していない感覚

  • 肌心地が良く、苦しさもなく、良くも悪くも着心地を感じず、何も着用していない身体の状態に近かった。
  • 普段の下着は胸を「下から支える」「横から包み込む」という感覚に近いが、スポーツバインダーはそのどちらでもなく「胸の膨らみをなだらかに覆う」感覚だった。

胸の膨らみをなだらかに覆うことでスポーツブラの締め付けによる苦しさを軽減させることができており、何も着用していない身体の状態に近づけることができたとわかりました。

(3) 胸筋があるようなシルエット

  • 締め付けるわけではないのに胸筋があるようなシルエットになるという点において、スポーツを楽しみつつシルエットもデザインしたい、という方にとって最適だと思った。
  • スポーツにダイレクトに寄与する場面ではないが、更衣室での着替えの際や誰かに見られる場面において、かっこよさも機能性も兼ね備えているスポーツバインダーは、本人のモチベーションの向上やスポーツにアクセスしやすくなるという角度で良い影響をもたらしてくれると思った。

スポーツバインダーが「シルエット作り」にも貢献する可能性があり、胸筋があるように見えるなどかっこよさを求めている人のモチベーションに良い影響をもたらす可能性があるとわかりました。

 

3. まとめ

今回のヒアリング・試着会を通じて、シスジェンダー女性もLGBTQ+当事者と同じように、下着の「締め付け」や「呼吸のしにくさ」、「胸の揺れ」に悩んでいることがわかりました。さらに、スポーツバインダーの試着を通して得たフィードバックをもとに、その評価ポイントと今後の改善点を整理することができました。

そして、さらに快適で理想的なスポーツウェアを目指すには、ホールド感の向上(特にアンダーバストの安定感)を追求することが必要だとわかりました。

今後もトランス男性やFtX、ノンバイナリーの方々だけでなく、シスジェンダー女性にとっても「快適で自分らしくいられ、パフォーマンスを向上させるスポーツウェア」を目指して開発を進めていきます。今回の試着会・座談会のようなイベントは今後も定期的に開催予定です。ぜひ、完成までのプロセスをユーザーの皆さんと一緒に作り上げていければと思います。

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