着用者と共につくるスポーツバインダー、 LGBTQユース向け試着会を実施
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試着会開催のきっかけは、2024年6月に行われたPOPUPイベント「SHIBUYA MODI RAINBOW DAYS」にて、OPTのインターン生である髙田(このレポートの作成者です)が、会場で出会ったLGBTQ当事者の2名とバインダーに関する悩み事や好きな所を話して盛り上がったこと。
この経験から、OPTがバインダー着用者の悩みを解決するプロダクトをつくるには、より多くの方の経験や視点が必要であると感じました。そこで、OPTファウンダーである下山田さん・内山さんに企画を持ちかけました。
当日は、髙田を含むユース当事者4名とファウンダーのふたり、そして、現役ラグビー選手の村上愛梨さん、トレイルランナーのまことさんが集まり、「スポーツとバインダー」をテーマに座談会・OPTのサンプル試着会を実施しました。座談会では、バインダーをつけて運動をした経験と悩みの共有、それぞれが使用しているバインダーの良い点や改善して欲しい点について話し合いました。また、試着会では、OPTが開発中のスポーツバインダーのサンプルをご試着いただきました。
*バインダーとは胸をつぶすための下着です。一般的には「ナベシャツ」と呼ばれておりますが、OPTでは「バインダー(Binder)」という海外で使用されている言葉を使っております。
運動時の違和感や悩み、私たちはどう向き合うべきか?
前半の座談会では予め用意されていた6つの質問に対して、それぞれ参加者の方の経験と悩みをご共有いただきました。ディスカッションに上がった参加者の皆さんの声をご紹介させていただきます。
質問① 運動することは好きですか?またそれはなぜですか?
スポーツは、チームメイトや友人とのコミュニケーションの手段であり、繋がりを感じられる!なので、スポーツは楽しい!
スポーツは好きだけど、女性としての体の使い方を求められることに違和感を感じました。武道をやっていましたが、アクロバット的な動きをする際に、力ではなく柔軟性という女性らしい動きを求められることが多くありました。
質問② 体育や部活等で運動する時にどんな事に困りますか?
私はトランス男性で、高校生の頃、誰にもカミングアウトせずにシス男性として生きてきました。自認する性である男性用の更衣室で着替えたかったけど、身体を見られてしまうことへの強い不安があり使用ができなかった。一方で、女性用の更衣室には性自認が異なることから入れず、こっそり隣にある中学生用の更衣室を使用していた。体育の授業の度にこの問題で悩み、非常にストレスでした。
バスケのときなど走る場面で、本気で走ると服が乱れてしまい、胸が目立ってしまうのが気になって思い切り走れません。アップの時は、他の人と一緒に走らずにゆっくり一人で走ったりしていました。
質問②の問いでは、安心して着替える事ができる更衣室がないことや、胸が目立つことへの悩みの話など、葛藤を打ち明ける方々が多く見受けられました。
質問③ 体育や部活動にて困っていることにどのように対処していますか?
部活動ではユニフォームの男女差が気になり、なるべく差がない陸上部などを選んできました。例えば、テニスをやりたくてもスカートが嫌で別の競技を選ばざるをえなかった。公式テニスでは試合のたびに女性らしいデザインのユニフォームを着るため、耐えながら頑張っていたけれど、それが本当に嫌でした。
私はシスジェンダー女性で、身体に違和感はないけれど、小学校から水泳の授業の時に、皆の前で水着に着替えるのがすごく嫌でした。友達と一緒にサマーランドに行っても、一人でトイレに行って汗だくで素早く着替えて戻る、そんな感じでした。
質問③の問いでは、男女ごとに分けられてしまうユニフォームや水着への共通の悩みが浮き彫りになりました。
質問④ 自分が愛用しているバインダーのどこが気に入っていますか?
今使っているタンクトップ型のバインダーは二重構造で、胸をなだらかに抑えてくれるのが好き。でも、速乾性はなく、しっかりした生地なので、スポーツ時にはちょっと暑いと思う。
タンクトップ型のバインダーを2着同時に着ています。一枚だけだと胸の潰れ具合が満足いかず、二枚重ねにしています。ぎゅっと胸が潰されて苦しいけれど、胸が潰されていることで安心できます。
質問⑤ ナベシャツという名前についてどう思いますか?
小学生の時に「おなべ」と言われていじられていました。からかわれた事がすごく嫌だったので、侮辱的な経験が思い出される名前がついているナベシャツは着ることができないと思ってしまった。
“クイア”って言葉はもともとマイナスな意味合いだったけれど、LGBTQ当事者が自分たちの権利を主張するためにあえて使うようになったことで、現代では肯定的な意味合いを持つ言葉に変化した話もある。だから、意味合いが嫌でも、無理して使わないようにするのはどうなんだろうと思いました。
質問⑥ OPTのスポーツバインダーに何を期待していますか?
(今は胸があることに違和感がある当事者向けとされている)バインダーが、”スポーツ用”のインナーとして販売されることで、買いたい時に親にも相談しやすくなると思いました。
誰もが購入しやすい名前になって欲しい。「スポーツバインダー」という名前がついていると、ジェンダーレスなアイテムとして扱いやすく、男性や女性を意識しなくてすむのが理想的。
OPTのスポーツバインダーに求めるものは何か?
後半の試着会では、開発中のスポーツバインダーのサンプルと、他社商品を用意させていただき、参加者の皆さんに着用いただきました。それぞれのバインダーを更衣室にて着用いただいた後、サンプルの良かった点や今後改善して行くべき点を共有し合いました。
開発に際して特に力を入れている「胸を潰しすぎずに抑える構造」や「ストレッチ性の高い生地」に対して、プラスな声を多くいただきました。締め付け感がきつすぎないことで、着心地の良さを感じていただけたようです。また、スポーツ用であるからこそこだわっている「通気性」や「速乾性」を試着を通して感じられたという声もあがりました。
既存のスポーツブラ・ナベシャツに関してのアンケートをとった際、悩んでいることの中でも上位を締めた『胸の揺れ』。外から見て揺れているかだけでなく、揺れていることを自分が感じないことで心理的な安心感を得られるという声が、アンケート内にも多く見られていました。今回のサンプルを着用した際、実際にジャンプする動作を行ってもらいましたが、揺れを感じなかったという嬉しい声があがりました。
また、デザインに関しては模索途中ではありますが、肩紐の太さは太い方が良いという意見もいただき、開発に反映していきたいと考えています。
自分らしくあれるスポーツバインダーを目指して
「僕は、胸をとる手術をしたので、最近は胸の問題から離れていたのですが、今まで悩んできたことをもう一度見つめ直して考えることができたことで、昔の自分が救われました。良い機会をいただきありがとうございました!」
「バインダーについて、今まで真面目に話せる機会がなかったので凄く嬉しかった。バインダーに対しての多様なニーズや色んな視点を聞けたのも、とても面白かったです。悩みを悩みのまま話すのではなく、こんなものがあったらいいなというテンションで楽しく話せたのが良かったです!」
「OPTから”スポーツバインダー”という名前を広げていくことで、多様な人が購入・使用しやすくしていきたいと思いました。また、性のあり方に関係なく、共通する葛藤や悩みも多いのだということに気がつきました。OPTは関係者だけのものづくりではなく、みんなで一緒につくっていくことが大切なのだと改めて気づくことができました!」(髙田)
今回、ご参加いただいた皆様からの貴重なお声を踏まえて、より着用者が自分らしくあれるバインダーへと進化させていきたいと思います。今回は、バインダーに関する座談会・試着会イベントでありましたが、今後も定期的に同じようなイベントを実施する予定です。ぜひ、完成まで、ユーザーの皆様にも伴走いただけたらと思います。